研究概要 |
極値理論の応用として,ステレオロジーで典型的なWicksell小球問題について研究した.すなわち,ランダムな大きさの球が空間にランダムに配置され,観測可能なのは検査平面上の球の切断円データとする.このとき,与えられた体積中の最大球の大きさの予測について研究した.また,大阪湾の潮位データに最近の極値データ解析法を適用した. 具体的に今年度は昨年度に続き,次の研究を行った. 1. 空間の球の直径の従う分布の右裾が指数分布で近似できる場合に,与えられた体積中の球のreturn level(それ以上の球は平均1個となる値)を予測する問題を考えた.平面上の切断円の上位r個の観測データに基づく予測法を構成し,その精度をシミュレーション実験で調べた.用いる上位r個のデータの決定方法として,経験分布関数を用いる方法とロバスト回帰に基づく方法を調べ後者の方法が良いことを明らかにした.しかしreturn levelは非常に小さな確率の上側確率点に相当し,予測の精度はそれほど良くないことがわかった. 2. 大阪湾の潮位データに極値理論で最近提案されているHill推定量に基づく解析法を適用した.潮位データを整理し種々のグラフを書きデータの診断を行った.そして,潮位データは分布の裾の重たいPareto分布で近似できることを示した.しかし,台風等の影響の高潮を完全に説明出来るモデルは難しく,この様な異常値を取り扱うモデル作りが今後の課題として残った. 最近提案されている極値データ解析法について計算機実験でその精度を調べている.
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