今年度はロジットモデルの基づく質的変量のパス分析について考究した。このような分析はGoodman(1973)に研究されているが、対象とする変量は2値である。さらに、Goodmanは説明変量の目的変量に関する効果に対して、全効果、直接効果、間接効果の評価法を与えていない。このことはパス分析において大きな欠点といえる。本研究ではGoodmanと同様に対数オッズを用いて、説明変量の目的変量に対する効果を考察した。まず、説明変量間に交互効果のないロジットモデルについて説明変量ベクトルと目的変量の基準対数オッズを定義し、その平均を説明変量ベクトルの全効果として定義した。この効果が用いたモデルと「説明変量と目的変量が独立な場合のモデル」との距離(distance)を示すカルバック=ライブラ-(KL)情報である(定理1)ことを証明した。この定理は提唱する全効果の評価が妥当であることを示す。説明変量の直接効果については他の説明変量を固定した場合の基準対数オッズを考え、その平均で定義した。この効果がモデルと「説明変量と目的変量の条件付き独立モデル」の距離を表すKL情報である(定理2)ことも説明した。直接効果は説明変量固有の効果であり、定理2はこのことを示す。母数の最尤推定後における効果の漸近分布についても考究している。 次に基本的考察を交互効果をもつロジットモデルに適用し、全効果、直接効果、間接効果の評価をし、交互効果の無い場合と同様の結果を得た。この結果は再起的因果システムに応用することが可能である。以上の結果はAn approach to path analysis of categorical variablesとして取りまとめ中である。
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