研究概要 |
非線形・非ガウス型状態空間モデルに含まれるパラメータの推定や自動調整に関する研究を行った. まず,昨年度に引き続きモンテカルロフィルターの改良をそのパラメータ推定への応用を行った.特に,金融時系列の確率的ボラティリティの推定のために利用される状態空間モデルについて,従来のガウス分布近似のほかに代表者たちが提案した方法との比較や非ガウス分布のまま厳密に計算する非ガウス型フィルタの方法を比較検討し新しい知見を得た.また,さらに自己組織化の方法を適用することによって,最尤法を用いずにパラメータ推定とボラティリティの推定を同時にかつ自動的に行う新しい方法を開発した.さらに,この方法をトレンドとボラティリティの変化を同時に笠定する方法を開発し,トレンドの変化がボラティリティの増減に及ぼす影響をモデル化することを試み,実際にAICの意味でよいモデルが得られることを見出した. 自己組織型の状態空間モデルに関しては従来は分散や係数の大きさなどを自動的に調整できることがわかっていたが,分布の形をあらわす形状パラメータに対しても有効であることが判明した. さらにこの方法を拡張すると,ノイズの分布などをまったく仮定せずに残差の系列から自動的にモデルの分布を構成しながらフィルタリングや平滑化を行う新しい方式も考えられることに気がつき,試験的な研究も行った. 分担者樋口はモンテカルロフィルタの方法を改良し,少数係数データの季節調整のための方法を開発した.また,川崎は観測値の次元が状態の次元よりもかたり大きな場合に生じる問題を検討し,その困難点を克服するための方法を提案した.
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