研究概要 |
時系列解析の分野では状態空間モデルを用いた統一的なモデル構成法が積極的に利用されているが,最近はさまざま重要な問題と関連して非線形・非ガウス型の時系列モデルの必要性が認識されている.非線形・非ガウス型の状態空間モデルに対してはカルマンフィルタでは精確な状態の分布は得られないので,より一般のモデルにも適用可能なフィルタリングおよび平滑化のアルゴリズムの研究が盛んになってきた.これに関連し,研究代表者は1987年に非ガウス型平滑化の方法を開発したが,最近になって高次元のシステムにも適用できるモンテカルロ・フィルタを提案した.本研究ではこの方法を応用して,状態とパラメータを同時推定する自己組織型のモデリングの方法の研究を行った. 研究成果報告書に採録した[1]Kitagawaは非線形・非ガウス型状態空間モデルの状態推定,パラメータ推定,自己組織型モデルによる同時推定の方法とその応用をまとめたものである.[2]Kawasaki et al.では観測値の次元が状態空間の次元よりも遥かに高い場合に生じる,パラメータ推定の困難を解決する方法を提案した。[3]Higuchiでは非ガウス型状態空間モデルに基づく少数計数データの季節調整法を提案した。[4]北川では,自己組織化の方法をさらに発展させ,ノイズの分布をパラメトリックに与えなくても,フィルタリングの結果得られるイノベーション系列から,ノイズの分布を自動的に構成する方法の開発を試みた。 本研究では上記のような新しいモデル・計算法の研究と同時に金融・経済および地球科学関連のデータ解析への応用を積極的に試みた(Kitagawa and Higuchi(1998),Kondo and Kitagawa(1998a,1998b),Sunai et al.(1998)).研究成果報告書では[5]北川,佐藤,永原,[6]北川,佐藤が金融データの確率的ボラティリティの推定,[7]樋口がGPSデータの自動解析への応用に関連するものである.
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