研究概要 |
平成9年度は、以下の研究成果を得ることができた。 1.従来型のマルチスレッド型プロセッサアーキテクチャの評価 EM-X,RWC-1というの実機によってクルチスレッド型並列計算機の評価を行ない、新しいマルチスレッド型プロセッサアーキテクチャ設計のための基礎データを得た。通信と計算が融合したアーキテクチャであるRICAの有効性が並列要素数100程度で、実用規模のベンチマーク問題によって検証された。具体的には、Radix Sort,疎行列計算、密行列計算(Linpack)などのベンチマーク問題を解かせたときに、商用計算機などと比較して実効的な優位性が確認された。 2.マルチスレッド支援機構の提案・評価 マルチスレッド型プロセッサ向けの相互結合網、入出力機構、OS支援機構などの諸要素技術の提案・評価がなされた。 3.新プロセッサアーキテクチャの提案 21世紀のデバイス技術を念頭に置いた、新しいプロセッサアーキテクチャとして、オンチップマルチプロセッサとプロセッサ・メモリ混載型チップのアーキテクチャを考案し、大規模シミュレータによってこれらの最初の評価を行なった。シミュレータは、Stanford大学が開発したSimOSを基本として、これを改良し、Spec、SPLASHなどのベンチマークによってこれらアーキテクチャを評価した。 具体的には、オンチップマルチプロセッサにおいては、台数効果の他に、二次キャッシュをチップ内に納めることによる一次キャッシュミスのペナルティの削減、キャッシュ間通信の高速化によるコヒーレンス制御の高速化などが確認された。また、プロセッサ・メモリ混載型チップにおいては、メモリバスをVLSIチップ内に納めることにより、二次キャッシュミスのさいのペナルティが削減され、高速化が実現されることが確認された。 具体的には、問題によって、従来型アーキテクチャを踏襲したVLSIチップに比較して、6割以上の性能向上が見込まれることなどがわかった。 さらに、これらの基本アーキテクチャに関して、マルチスレッド実行のアーキテクチャ支援を考慮した拡張を検討した。
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