これまで我々は、分子進化系統樹作成法の開発において、経験的複雑性法という新しい系統樹構築理論を提案しただけではなく、経験的複雑性法に基づいてプログラムパッケージも開発した(パッケージ名未定)。今回我々はこのプログラムを使ってエイズウイルスの進化解析を行った。 その結果から二つのことが分かった。まず、二つの系統樹とも、三回目分離した配列は(WMJ3)二回目分離した配列(WMJ2)より最初の配列に近い距離を示したことから、この三つの配列は直行的、つまりWMJlからWMJ2、WMJ2からWMJ3に進化してきたではなく、平行的に進化してきたということ。もう一つ、これはウイルス進化において重要な意味を持つが、ウイルスの進化過程は中立進化マルコフモデルだけで説明するのは不十分であること。非同義置換と同義置換の比率は直線的に増加したことから、その時期に遺伝子が正の選択(positiveselection)を受けて加速進化したのではないかと考えられる。 我々はウイルスの進化には探索期ともいえる時期すなわち広範に分岐する時期と、正選択進化といえる時期すなわち適合的な配列形式を得て正の選択を受けて一気に進化する時期の二つの時期がある(非一様性)と提案する。今度分析したデータはこの加速進化時期の証拠だと考えられる。これからは、より多くウイルスの配列について解析を行い、非一様性マルコフ進化モデルの正確性をさらに証明する予定である。
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