研究概要 |
本研究では,セル状神経回路網(Artificial Cellular Neural Network;以下ACNNと略記)と称する,神経細胞ユニットがその近傍のユニットだけに接続されているタイプの神経回路網について検討している.昨年度は,ユニット間の結合荷重を1(興奮性),-1(抑制性),0(結合なし)のいずれかとしてランダムに生成した初期のACNN群を目的に応じて遺伝的アルゴリズム(GA)により進化させる方法を確立した.引き続き実施された本年度の研究成果を次に示す.1. GAによりACNNを最適化する際のパラメータの最適化:GAによる最適化の際,初期固体群における結合荷重の分布や交叉方法など,多くのパラメータを決定する必要がある.そこでここでは,それらのパラメータを実験的に最適に調整する方法を確立した. 2. ユニットのリセットおよび不揮発性ユニットの導入:3次元ACNNに時系列信号を処理させる場合,1出力毎に不揮発性ユニットと称する一部のユニット以外のユニットの状態を初期化する方式を新たに提案し,これにより,時系列信号処理が昨年度の方式よりも効率よく行われることを示した. 3. 迷路探索問題への適用:3次元ACNNによる時系列処理の例題として,迷路内のエージェントがゴールまでたどり着く際の環境入力に対する進行方向決定問題を取り上げ,新しい方式のACNNによって,効率良く問題の最適解を得ることができることを示した. 以上の研究成果から,本研究において当初設定した目標である,ACNNタイプの神経回路網の最適化法の確立,並びにその有効性の評価を行うことができた.本研究によって開発されたACNNは,基本的に同じユニットを2次元状あるいは3次元状に集積するだけで高度な情報処理を行うことが可能であり,ハードウェア化に適した神経回路網である.ACNNをハードウェアによって実現する試みも本研究の成果に基づき他の研究グループによって開始されている.
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