研究概要 |
1. 本研究の基本的な手法である「総ペナルティ最小化係り受け解析法」と,他の係り受け解析法である「確率的CYKアルゴリズム」との関係について研究を進めた.これらの方法は,いずれも与えられた単語列を二つの部分列に分割する操作を繰り返すものであり,その際,ある種のコストが課せられると考えられる.そして,問題は,総コストが最小になるような分割の仕方を求めることに帰着する.このような見方をすると,これらの方法は,さらに一般的な「最小コスト分割問題」の特殊な場合とみなすことができる.これらの方法の違いはコストの定義の違いから来ており,「総ペナルティ最小化係り受け解析法」によれば,「確立的CYKアルゴリズム」では利用できない言語知識を利用することもできる.以上の知見は係り受け解析に新しい展望を与えるものである. 2. 音声言語においては韻律と統語構造が密接に関連している.その関連を定量的に捉え,係り受け解析に利用することが,本研究の目的の一つとなっている.前年度の研究により,有効な韻律パラメータがかなり明らかになった.本年度は,そのような韻律パラメータの話者依存性を調査するため,韻律パラメータの分布を推定するための学習話者と評価用テスト話者の種々の組合せについて,係り受け解析の精度を求めた.その結果,学習話者とテスト話者が異なっていても韻律情報は係り受け解析に有効であること,また,学習話者数が増加するほど,係り受け解析の精度が向上することが分かり,韻律情報はあまり話者に依存しない得性質を持つことが明らかになった.しかし,学習話者とテスト話者の発話速度が異なると,解析精度に悪影響を与えることも観察された.したがって,発話速度に関する何らかの正規化処理が必要と思われる.
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