研究概要 |
われわれは生物の視覚神経系に注目し,New York大学のDr.Ken-ichi Naka 教授との共同研究より異なる機能の細胞からなる網膜での動きの情報の検出,保存そして再構成について研究を進めてきた.近年,視覚系と聴覚系,視覚系と体性感覚系,視覚系と聴覚系と体性感覚系の異種の刺激によるニューラルの情報の統合化の研究が注目されている.このような異種センサによる情報の統合化ネットワークのメカニズムとその効果の研究は重要な課題である.本研究では統合化したニューラルネットから情報を各々の異種センサのサブネットにフィードバックし,各センサー処理系のパターンの認知機能が統合処理により強調されることおよび学習の効率が増すことを明らかにした. そして本研究では,異種センサからの情報を評価・統合することによって,一部のセンサ情報が不正確な場合でも正確な認識を行うことが可能な人工神経回路モデルを提案した.また応用例として,本システムの自律ロボットへの適用方法を示した.そして計算機実験により,従来の人工神経回路を用いた自律ロボットと本システムを用いたものとの行動内容の比較を行ない,本システムを用いたロボットの悪条件下における認識能力の高さを示した. しかし,本システムには以下のように若干の課題が残されている. まず,統合部の次元数などのように,人間が決定しなくてはならないパラメータがいくつか存在している.よって,それらのパラメータをあらかじめ適切に設定しておく必要がある.また,センサ情報の優先度をセンサからの入力と遠心性経路の出力との差のみによって求めているため,求心性経路が適切な値を出力したとしても,センサ情報がノイズの混入などによって変形していた場合には,結果として優先度が低くなってしまう.よって,優先度の計算法にも再考の余地がある.
|