この研究で扱う自己組織化とは、状態を有する多数個の素子が連携して一つの総合状態を創出していくことを意味している。個々の素子には入力を変換して出力を与える単純な情報処理機能が与えられており、系全体としては複雑な情報処理が可能となっている。このようなシステムは学習に基づく高度な情報処理を可能にするものとして期待されており、本研究では主として画像のモーフィングを用いて仮想現実を実現することを目指した。開発した手法と結果は以下の通りである。 (1) 学習的情報処理に利用できる自己組織化アルゴリズムとしては、従来、特徴マップとよばれるものが主流となっていたが、これは元のデータの情報を著しく失う形になっている。そこで、研究代表者は二重レベルの自己組織化特徴マップを生成できる学習アルゴリズムの開発を行った(多重降下競合学習)。 (2) 静止画像を情報源として多重降下競合学習アルゴリズム適用することにより、領域の特徴マップと標準カラーパターンの両者を得ることを可能にした。これは、画像情報の圧縮を行ったことになっているが、同時に変形を可能にするメッシュパターンが自己組織化により生成されたことを意味している。 (3) 上の結果得られた圧縮画像を、外部知性(システムの利用者)の指定に基づいて変形(モーフィング)することを試みた。これは、仮想現実としての動画像を生成する手法を与えたことになっている。 (4) さらに、奥行きを与えることを行い、3次元化を図った。 以上のようにして得られた手法は、今後、コンピュータにおけるヒューマンインターフェースの向上に寄与する可能性が高いと認識され、この研究を終了した。
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