研究概要 |
「両対数方眼紙の横軸に練習回数、縦軸に作業時間を取ってグラフを描くと直線になる」という事実(練習の巾乗法則)は、広く知られているが、その「直線」はつねに大量のノイズ(しばしば当事者にはスランプとして認識される)が随伴している。この研究の長期的目標は、そのノイズの成因を突き止め、ひいては練習による技能習得の本質的メカニズムに迫ることである。そこで作業課題として、ある創作折り紙作品を繰り返し折るというものを選び、それを常識を超える長期にわたって多数回繰り返し、作業所要時間の消長を調べている。 実験参加者は延べ13名、うち3名は現在も実験を続行中である。平成12年2月末現在、参加者Aは(途中、6か月間の休止をはさんで)ほぼ連日にわたり1380セッション59,773試行を完了、また参加者E1およびE2は、ほぼ連日にわたりそれぞれ821および809セッション、31571および33421試行を完了した。なお本年度は、あやとりを題材とする非公式の実験(参加者8名、100セッション程度)を試みた。本年度の主な知見は次のとおりである。 1.これらの参加者のデータを両対数目盛でグラフに描いたとき見出される顕著な規則的波動は、おおむね1000試行を超えるあたりからは、ある擬似アルゴリズムに従って引いた上下の包路線の間を往復する。 2.昨年度までの研究で2、3の代表的なデータについて見出された作業時間の分布(ヒストグラム)の特徴的挙動は、実は事実上すべての実験参加者において見出される。 3.得られたデータ(あやとりに関するものを含む)について行った。連の数による統計的検定は、それらのデータが「練習の巾乗法則にいう「直線」の上に何らかのランダムな変動が乗ったもの」という従来の解釈にはとうてい納まらないことを示している。
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