本研究は、前方後円墳に関する信頼度の高いデータベースの存在を前提として、それにもとづく定量的な情報処理によって新しい知見、ないしは研究上有効な情報の導出をねらう点に特色がある。このため、本年度は前方後円墳データベースの精度(とくに古墳の位置情報)の向上とデータ量の充実に重点をおいた調査研究を実施した。すでに、考古学上の知見、あるいは代表者による従前研究によって得られた知見からも、前方後円墳の形態研究における地理的情報の重要性が認知されている。したがって、前方後円墳データベースに地理的情報を効果的に反映させる必要性は研究遂行上とくに高いと考えられる。 代表者の究極の目標は、前方後円墳データベースと3次元地理情報(データベース)を効果的に結合した地理情報システム(GIS)を構築し、これを操作することによって従前には到達できなかった新しい知見や知識を獲得することにある。こうした研究計画を推進するにあたり、前方後円墳とはまったく対象が異なったとしても発想が類似した研究の実態を調査する必要がある。こうした目的にしたがって国内外の文献資料調査や研究打ち合わせをおこなった。とくに、海外の研究者による本研究の研究計画のレビューを目的として海外研究出張(バルセロナ市立大学)も行った。 前方後円墳のプロトタイプが畿内に存在するという仮説の検証も本研究の興味ある課題の1つとしているが、このための基本的な方法論としてまず統計的なアプローチを想定している。本年度はその準備段階として、いくつかの統計処理手法の基礎的な調査研究と予備的な実験を実施した。
|