研究概要 |
1. オブジェクト指向データベース(OODB)の基礎となるデータモデルとして,複合オブジェクトが知られている。このモデルでは,クラス間のISA階層が定義でき,また,オブジェクトの属性値として単純値だけでなくオブジェクト自身も取り得るので,関係モデルに比べてより柔軟にデータベーススキーマが構築できる。更に,(データベース内を航行するために)質問中に複雑な経路式を記述することにより,より高度な質問も表現できる。本研究では,経路式に逆航行を含む質問を効率的に処理する具体的な手法を開発することを目的とする。 2. 前年度は,特にデータベーススキーマに制約を仮定しなかったが,本年度は,型に関する制約を表すSC(Specialization Constraint)がデータベーススキーマに指定されている場合を考察した。 3. 与えられた質問から,経路式に逆航行を含まない質問に変換することにより,通常の質問処理を行なえるようにするため,経路式に逆航行を含む質問のクラスと,逆航行を含まない質問のクラスの等価性,及び,その変換アルゴリズムの開発を試み,次の結果を得た。 (1) 経路式に逆航行を含む任意の代数式に対して,経路式に逆航行を含まない等価な代数式が存在することを示した。 (2) 次に,経路式に逆航行を含む任意の代数式から,経路式に逆航行を含まない等価な代数式を求めるための多項式時間アルゴリズムを開発した。 4. 経路式に閉包が含まれる場合について,一つのクラスと経路式が任意に与えられたとき,そのクラスのオブジェクトからその経路式に沿って他のオブジェクトに到達できるようなデータベースが存在するかどうかを判定する航行可能性問題に関して,それを解く多項式時間手続きを開発した。
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