研究概要 |
本研究の目的は,自然科学,社会科学,人文科学の各分野において,ネットワーク環境下に移行する中で,学術情報伝達メディアの役割の変容を明らかにしようとするものである。本年度は,平成9年度に行った心理学分野の調査を踏まえ,平成10年度の物理学分野の調査結果の分析を行うとともに,新たに人文科学として歴史学,社会科学として経済学における調査を行った。歴史学分野では,『研究者ディレクトリ』から大学所属の歴史学研究者904名に対して郵送調査を行った。質問項目はコンピュータやインターネットの利用環境,コンピュータの習熟度,電子メールなどのインターネットツールの利用状況である。回収率は40.5%で,これを集計,分析した。歴史学では,物理学との差は大きいものの心理学とほぼ同様な結果となった。専門領域では,考古学の利用が高く,西洋史では低い。一方,経済学分野では,4名に対して面接調査を行った後,1,161名に郵送調査を行い,323名から回答を得た。面接調査では,電子メディア利用について,情報交換を中心とするものと,情報入手を中心とする研究者に大きく分けることができ,これは郵送調査の結果でも確かめられた。計量経済学のような専門領域が存在しているためもあり,経済学研究者の中のかなりの部分がコンピュータやインターネットを利用しており,特にWWWの利用が高いという傾向がみられた。電子雑誌の利用も他の分野や調査に比べても比較的高いと言える。
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