今年度の研究は、以下のような概要である。 <点字図書館・公共図書館の現状>数館の訪問調査とアンケート調査を行った。現在集計中であるが、点字図書館はその機能を点字や録音図書の図書館としての機能から、生活情報などを提供したり、支援したりする生活情報センター的な役割に移行しつつあり、名称も変わりつつある。また、公共図書館でも障害者サービスの一環として点字や録音図書などを揃えて、専門の担当者をおくケースも見られる。 <墨字電子ファイルの利用>著作権の問題はあるが、視覚障害者の中では漢字情報のある墨字の利用が増大している。今回の実験では、学内での実験と限定して、新潮社などの出版社から墨字のテキストファイルの提供を受け、実験を行い、利用状況を調査した。専門的文書・論文になるにしたがって墨字文書を求めることが伺えた。 <点字電子ファイルの利用>先天盲の学生を中心に墨字より点字を好む場合があり、点字印刷と点字ディスプレイで読む場合とがあるが、点字ディスプレイは文書の校正やメモ書き以外には、あまり利用されていない状況が伺える。 <録音電子ファイルの利用>墨字や点字の電子データを合成音声で読ませる場合と録音図書を利用する場合では、録音図書の方が好まれる結果が伺えた。やはり自然の肉声の方が人には優しいのかもしれない。 <ユーザインタフェイスの調査>コンピュータの利用では、近年利用環境が、MS-DOSを中心としたCUI環境から、WINDOWSを中心としたGUI環境に移行しつつあるが、合成音声を利用した視覚障害補償では、CUI環境の方にまだ理がある。根本的問題としてWINDOWSのGUI環境では、いくつかのタスクが重なっていることがあり、三次元表現となるが、合成音声は一次元表現しかできない。したがって、例えば、OCRの利用する場合には、OCR機能しか利用できない。現状では、MS-DOSの開発環境が、ほとんどない状態では、ソフト開発はWINDOWSに移行しつつあるが、マルチタスクのWINDOWSがシングルタスクでしか利用できない状況が伺える。
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