数理モデルを元にする意思決定支援では、現実の問題とそれを表現する数理モデルの相互関係の中に、応用上極めて重要な情報が隠されているとする本研究の立場から、我々は既存の諸研究とは異なり、現実問題の構造化した記述(「問題定義」と呼ぶ)とその数理モデルを独立に記述し、両者の関係は「結合条件」として別に記述する方式を提案した。この方式によれば、問題定義と数理モデルの間の多:多の対応関係を無理なく記述することができる。問題定義の記述方法として汎実体-関連モデルを提唱し、その記述形式を集合論的方法を用いて確立した。この記述方式によれば、現実問題を非数理的用語、言い換えれば、ほぼ日常語に近い用語を用いて問題定義を記述することができ、しかも、実体、関連といったオブジェクトを記述の単位として活用する構造化記述を実現することができる。従って、数理的世界に疎い意思決定者にも理解しやすく、しかも、検索・部分変更など再利用に便利な事例ベース・システムの構築が可能になった。このような記述方式を利用する問題定義並びに数理モデルの事例データベース・システムの基本設計を行い、開発に着手した。開発に際して、実体-関連モデルと親和性の高い関係データ構造、および、複雑なデータを一体化して操作することが容易なオブジェクト指向方式を併用する。開発作業は進展しているが、本研究の目標とするレベルまでの完成は来年度の予定である。なお、今年度の成果の一部を平成9年秋のOA学会で報告した。
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