研究概要 |
多目的最適化問題の答として意思決定者に提供されてきたのはパレ-ド解すべての集合であり,その膨大な数の中から1つを選択する方法は,これまで意思決定者の経験と嗜好に任されてきた.こうした意思決定者の負担を軽減するにはパレート解集合上での一目的最適化が必要であるが,パレート解集合は一般に非凸型であり,既存の最適化手法でこれを行なうことは不可能である.そこで今年度は,主として以下の3つの非凸型最適化問題を効率的に解決する方法について研究を行なった: 1.2つの目的値の積を与えられた値以下に押さえるモデルを提案し,その大域的最適解を有限時間で算出するアルゴリズムを設計した.積に関する制約の数が5つ前後までの問題に対し,計算実験によってアルゴリズムの実用性を確認した. 2.予算制約などを表すナップサック条件の下で互いに独立な複数の目的値の積を最小化するモデルを提案した.整数計画問題の解法として一般的な分枝限定法にラグランジュ緩和を組み込むことで各分枝操作を多項式時間で行なうことが可能となった.計算実験でも,120変数20目的の場合の大域的最適解を約20秒で得ることに成功した. 3.ナップサック条件下での多目的最適化と,生産費用と輸送費用の最適化を同時に行なう生産-輸送問題との関連を明らかにし,2のアルゴリズムを後者に拡張した.計算実験の結果,従来のアルゴリズムのわずか数百分の一の計算時間で大域的最適解を算出するできることが明かとなった.
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