研究概要 |
前年度の研究結果をふまえ,本年度は点の密度分布という点から見て適切な表現方法の検討を行った.具体的な手順は以下の通りである. まず,点分布図における人間の分布パターン認知構造を調べるための実験を実施した.様々な分布密度・パターンの点分布図を被験者に提示,それらをいくつかの指標で定量的に評価させ,その結果をリアルタイムで保存する.そして,得られた実験結果は,点分布図の持つ空間パラメータに基づいて確率的モデルとして表現し,点分布図の表現方法と分布パターン認知の関係を表す数理モデルを構築した.ここで用いたモデルは昨年度構築したクラスター認知モデルとは独立であり,それぞれ個別に適用することができる.但し,データの制約上,非集計型ではなく集計型モデルを用いざるを得なかったため,個人に対する説明力は若干低くなってしまっている.とは言うものの,その説明力は90%を越えており,空間情報の表現方法選択には十分適用できるものである. 次に,昨年度得られたクラスター認知モデルと上記のモデルに基づき,点分布図の分布密度・パターンからクラスター・分布パターン認知を予測するシステムを構築した.このシステムは,市販のGISに組み込めるよう,比較的汎用性の高いマクロプログラムとして作成した.このプログラムを用いることで,GISデータシステムは点分布図における適切な表現方法を探索的に見つけることが可能となる.最後に,構築したシステムの試行実験を行った.結果は概ね良好であり,与えられたデータを示唆的に表現する手法の一つを提案することができたと言えるであろう.
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