地域ヴィジョン形成に関わる認知的プロセスを分析評価するために、神奈川県総合計画を題材にして、発話プトコル実験を行った。まず、総合計画書の地域将来像に関するテキスト(元テキスト)を、計画専門家7名と一般被験者7名に提示し、頭に浮かんだことをそのまま発話してもらい、プロトコルデータとして記録した。続いて、プロトコルデータの形態素解析を行い、品詞別の単語に分解し、頻度分析を行った。その結果、単語レベルに分析単位を置いたこの分析法では、被験者が地域ヴィジョンを認知的に把握するために使用した、名詞、動詞、形容詞等の多様性を把握することはできるが、意味や概念がどのように形成されるか、また他者の意見に対するレスポンスがどのように形成されるかをとらえるためには有効性を欠くことが判明した。そこで、意味をとらえる最小単位として、文を分析単位に選び、プロトコルデータを分析する方法を開発した。分析の方法は、まず文を様相と命題に分離する。命題を元テキストに対して新しい情報を付加しているか否かに分離し、付加された情報を、事実命題と価値命題に分類する。様相の類別としては、価値的態度に関する様相と信念に関する様相に分類する。さらに、発生した文が元テキストのどの文を参照しているか情報を付加することにより、発生したプロトコルから元テキストのどの部分に対してどのような認知的評価が行われたかを体系的に整理することが可能であることを確かめた。当初の計画では今年度中に、ゲ-ミング実験を行う予定であったが、対話プロセスを分析するための方法の開発に終った。今年度開発した方法を用いて、ゲ-ミングによる対話モードの抽出にめどが立ったものと考えられる。
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