本研究では、多主体協調によるビジョン形成を円滑に進める対話モードを抽出する事を目的として、まず、神奈川県総合計画を題材にした発話プトコル実験に基づき、認知的プロセス評価の手法の開発を行った。具体的には、総合計画書の地域将来像に関するテキストを、計画専門家7名と一般被験者7名に提示し、頭に浮かんだことをそのまま発話してもらい、プロトコルデータとして記録した。文を分析単位に選び、文を様相と命題に分離することにより発話データの持つ曖昧さを減少させ、文間の論理関係から、思考のプロセスを分析する方法を開発した。この方法は、文間の論理関係をグラフ表現することにより、思考の流れを把握する上で有効であることが確かめられた。続いて、自治体総合計画を題材として、対話実験を行った。対話実験は、社会人を対象として、計画素案に対する意見の表明とそれに対するコメントをプロトコルとして記録し、発話者間の態度が、思考の流れにどのように影響するか分析を行った。その結果、思考の流れの協調パターンに、演繹的に結論へ到達していく収斂型パターンと、必ずしも一つの結論へ結びつくわけではないが、いくつもの発想が並列的に生成されるオポチュニスティックなパターンが見つかった。しかし、今回の実験では、これらの思考パターンと関連のある発話者間の態度を見つけだすことはできなかった。
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