社会システムは、情報システムの導入によって、どのような問題解決能力を獲得することができるのであろうか。この課題に取り組むため、知的な分散する主体を基盤とした相互作用に注目し、集合知能工学的な立場から、社会における情報システムの実施過程に関する実態の把握や、モデル化とシミュレーションを行なっている。 本年度は、情報の組織化について、情報流通、知識管理を視野に含めた社会情報システムのプロトタイプのモデル化を行う。具体的には、生活医療に関する情報の組織化を対象とした。生活医療の関係者や情報項目を整理し、実態調査を行うとともに、仲介型システムの構想にもとづいてモデルの構築を行った。この展開は、情報流通に関して、組織間生産流通情報ネットワークのモデル化を行い、進化過程について考察することによって、仲介型組織構造の特徴を解明することができたこと、さらに、同ネットワークにつき、組織知能モデルを構築することにより、意思決定おける迅速化などの現象を考察することができたことにもとづく。 また、サーバーコモンズに関して、情報の発信や取得における社会的ジレンマ問題、参加者の満足度による集団生成についてのシミュレーションを行った結果について、考察を行った。情報共有による境界の形成について、エージェント間の相互作用モデルにもとづくシミュレーションを行い、集団の生成過程について、新しい現象を創発させることができたことにもとづき、仮想空間におけるアイデンティティを解明することや、組織硬直化と再組織化の過程について操作的オーガニゼーションモデルを構築することにより、展開を図った。 以後、これらの結果にもとづいて、社会における情報システムの構築手順に関するknow howとknow whyを考察することによって、将来の情報技術導入に関するシナリオを描くことや、さらに、進んでは、社会が、どのようにして情報の意味を形成しているのかについて解明を試みる予定である。
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