本研究は、システム信頼性・安全性解析の基礎となるシステム故障に関する知識をシステム挙動モデルから導出する方法の確立を目的とする。従来用いられているFMEAでの影響度評価やFTAでのシステム故障と要素故障の論理関係の導出はシステム解析者の経験や主観的判断に依存していたが、本研究では、設計仮定を表現する客観的なシステム挙動モデルを用いることにより解析者による解析結果の差異や誤りをなくすることを試みる。 研究の初年度である本年度は、まず設計仮定からシステム挙動モデルを簡単に導出するために、物理的現象と要素モデルの対応が明確なボンドグラフ手法を用いることを試みた。ボンドグラフはシステム内を流れるエネルギーに着目したモデル化手法であるので、電気系、機械系や油圧系を統一的に表現でき、またエネルギー貯蔵量を表す状態変数、エネルギー供給を表す入力変数および各要素の特性関数で表されるシステム状態方程式でシステム挙動が表現できる。要素故障は特性関数の変化や入力関数の変化として表されるので、故障影響度は各状態変数の偏差として評価できる。 要素特性が詳細に得られた段階では各要素の特性関数を明確に表現できるが、設計の初期段階では定性的な情報でしか要素特性が記述されていない。そこで、特性関数の入出力関係の増加/減少のような定性的に表された要素故障に対して状態変数の変化を定性的に評価する方法について検討した。定常状態における状態変数が満たすべき制約条件を用いて定常状態における変数変化を導出する方法を開発した。
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