研究概要 |
本年度の研究においては,昨年度の「囚人のジレンマ」および「社会的ジレンマ」に対する「逸脱の連鎖を考慮した安定集合」および「プレイヤー間の交渉をモデル化した非協力ゲームにおける定常均衡」を用いた分析をより進展させ,以下の成果を得た. 1 2人囚人のジレンマの安定集合と定常的な均衡:昨年度の,「2人の囚人のジレンマ」についての安定集合による分析結果と2人の主体が交互に戦略を変えていくゲームの定常的な均衡による分析結果との相違を詳細に検討し,定常均衡に比べ分析が容易に行える安定集合による分析をどの程度まで適用できるかを明らかにした. 2 社会的ジレンマ:逸脱の連鎖を考慮した安定集合を用いた昨年度の分析をより発展させ,より一般的な社会的ジレンマの状況においても,昨年度得られたと同様な結果が成り立つことを明らかにした.つまり,たとえ主体間の話し合いの結果得られた取り決めに拘束力がなくそれから逸脱しても罰せられることがないとしても,すべての主体が自発的に逸脱せずそれを遵守するような協力が必ず存在すること,さらに,このような協定はパレート最適で個人合理的なものに限られること,を理論的に明らかにした.さらに,環境問題に対する国際的な取り決めなど,逸脱者を罰することが事実上不可能な場合において,交渉だけで決着できない場合,投票による決定なども含めどのようなプロセスで協定を定めていけばよいかも検討し,いくつかの実行可能なプロセスを与えた.
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