研究概要 |
本研究の目的は,メトロポリタンエリアおよびローカルエリアネットワークにおける障害発生のメカニズムを解析するとともに,障害予防手法,あるいは万一障害が生じてもその影響を局所的に留めるようなフォールトトレランス技術を研究開発することである.平成9年度における本研究の成果の概要を以下にまとめる. TCP/IPプロトコルでは誤り検出方式としてチェックサムと呼ばれる方式が用いられている.チェックサム方式における2重および3重誤りの検出率は既に知られている.本研究ではチェックサム部以外に生じた4重誤りが見逃される場合の数を求めた.これを基にパケット全体の誤り見逃し率の上界値および下界値を改善することができた. ワイドエリアアネットワークにおける実際の障害を解析するため,traceroute呼ばれるコマンドを用いて日本国内におけるインターネットの遅延を解析した.本学をはじめ,秋田大学,千葉大学,大阪大学,九州工業大学の協力を得て,合計20個の経路について約2ヶ月にわたり観測をおこなった.その結果,ループ,フラッピング,ダウンサーバ等の障害を観測することができた.また,米国を経由してパケットが転送される現象もときどき観測された.さらに,曜日毎の混雑度,時間帯毎の混雑度についてもデータを得ることができた. ローカルエリアアネットワークにおける実際の障害を解析するため,DSS(Distributed Sniffer System)と呼ばれるネットワーク解析装置を工学部内に設置し,実際に生じている障害を観測した.工学部内の6個のサブネットワークに対し,障害の種類,トラフィクの種類等を1週間づつ観測した.その結果,過度の再送,応答なしホスト,スロー転送等が観測された.また,6個のサブネットワークのそれぞれについてトラフィック量を調査することができた. 上記で得られたデータを基に,フォールトトレランスを実現するハードウェアならびにソフトウェア方式の開発ならびに特にハードウェアの試作等に関して,今後の研究課題として引き続き取組みをおこないたい.
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