主な四つの研究成果を挙げる。 先ず、生活情報の構造分析を通じて、災害後必要される生活情報を示したことである。そこで、生活情報を、一次生活情報(生存のために必要な生活資源に関する情報)、二次生活情報(豊かな生活資源獲得のための情報)と三次生活情報(ナルチシズムをみたすための情報)の三つの概念で定義した。生活様式の時代的変化は、この三つの生活情報の量的関係の変化としても示すことができるので、この三つの生活情報の量的関係を歴史的に解釈し、それを生活情報史観と定義した。この生活情報史観から、災害時の一次生活情報、二次生活情報と三次生活情報の発生の典型的なパターンを仮定した。被害の大きい災害になるに従って一次生活情報が必要となることを理解した。 次に、デジタル化されている新聞記事の分析方法、記事件数や記事件数割合の時系列変化の分析方法を示した。その方法を用いると、阪神大震災に関する生活情報のマクロな分析を行うことができる。上記した生活情報の典型的な発生パターンに当てはまるケースやその予想に反するケースが生じているデータの原因について考察した。 さらに、住民情報紙の分析方法を示し、住民情報紙の分類した。つまり、住民情報紙の記事の計量分析方法と、住民情報紙を構成する基本概念(情報発信主体、情報発信初動日、情報発信日数、情報発信回数と情報頻度の概念)を定義し、それらの基本概念の相互関係から、住民情報紙を第一期住民情報紙、第二期住民情報紙、第三期住民情報紙に分類した。さらに、三つの期間に分けられた住民情報紙の特徴は、一次と二次の生活情報の量的によって決定されていることを示した。 最後に、新聞紙や住民情報紙の分析を通して、震災直後に必要な生活情報である一次生活情報を提供するための生活情報の危機管理制度について述べた。安全管理と危機管理は明らかに違う。そこで、住民や市民に日常的活動を土台にした生活情報の危機管理の考え方や制度を提案した。
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