本研究は、1995年の阪神淡路大震災以後、わが国港湾の魅力の欠如が叫ばれ、全国で一斉に大水深バースを備える高規格港湾の整備が始まったが、このような全国規模での港湾整備が必要なのかどうか、また適切な規模かどうかを検討することを目的して始めたものである。 そこで研究は、まずわが国の港湾を背後地の経済状況も含め出来る限り視察調査することから開始した。調査した港湾は、平成9年度に北海道(室蘭港・苫小牧港・石狩新港・小樽港)、東北(塩釜港)、北陸(新潟港・伏木富山港)、中部(清水港・名古屋港・四日市港)、近畿(和歌山港)の5地域11港湾、次いで平成10年度には九州(北九州港・那覇港)、関東(横浜港)、東北(秋田港)の3地域4港湾を視察調査した。この現地調査を行うことで、わが国の港湾整備が社会資本として、すなわちコストセンターとして整備されていることがよく分かった。特に、日本海側の諸港湾の整備は現状の港勢とはかなりかけ離れた過剰整備という感じを受けた。 次に港湾にライフサイクルが認められるかどうかを検討した。港勢の大きな港湾でも、その港湾が衰退期であれば、それ以上の過剰整備は無駄なものとなるし、逆に現状の港勢が小さくても成長期であれば、港湾整備は十分に必要と理解される。これには多変量解析を用いることで、図として表現することが出来た。 さらに、港湾を抱える地方自治体にとって港湾経済がどの程度の影響を及ぼしているかについても多変量解析を用いることで明らかにすることが出来た。 しかし、研究途中で勤務先が変わるということもあって、テーマにあるライフアセスメントまでは到達できなかった。個人で行う研究の限界をつくづく感じた次第である。 したがって、今後の研究としては港湾の開発・整備時における環境への影響や廃棄物処理場としての環境への貢献、また衰退期を迎えた港湾の役割と環境改善への貢献の仕方などについて検討を加えなければならない。
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