本研究の目的は、対流モデルを用いたシミュレーションによって活発な積乱雲に伴う強風がどのようなメカニズムによって起こるかを知ることである。本年度は、これまでに使ってきた英国気象局の3次元対流モデルを、氷晶過程も扱える雲物理過程にする、水平方向にオープンの境界条件も扱えるようにする、より大きな水平スケールの現象を扱えるように水平格子間隔を空間的に変化できるようにする、実際の観測解析結果を使って初期条件を与えられるようにする、というように拡張することを考えていた。しかし、別の研究の過程で、オクラホマ大学で開発されたarpsというモデルを使う機会があり、そのモデルでは、氷晶過程や、オープン境界条件の場合も扱えることがわかった。 そこで、今年度は、これら2つのモデルの比較を行なってみた。現象としては、国際比較実験として行なわれている熱帯のスコールラインを扱った。どちらも、暖かい雨(氷晶過程を入れない場合)、2次元の結果で、どちらのモデルでも、長時間維持されるスコールラインがシミュレートできた。比較の結果、英国気象局のモデルの方が、arpsよりも対流が活発になることがわかった。国際比較実験ということで、他にもいくつかのモデルの結果が公表されているが、arpsの結果はそれらに比較して対流が弱い傾向になった。この結果は、移流スキーム、雲物理過程、乱流拡散過程など、さまざまな過程がきいていると考えられ、現在、何が効いているかを検討中である。 今後、両方のモデルの良い部分を使うように対流モデルを拡張し、国内で観測された強風に場合について、これまで、英国気象局のモデルを使って行なったように、対流雲下の強風について、その生成メカニズムを調べていく予定である。
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