集中豪雨や豪雪をもたらす激しい降水系は、メソスケール(中規模、水平スケールで数10kmから数100kmの規模)に組織化された対流システムである。これをメソ対流系と云う。メソ対流システムのリトリーバルでは、ドップラーレーダーの速度場の解析法を発展させるとともに、雲解像モデルの開発が不可欠である。メソ対流系は100kmオーダーの構造を持っており、それを構成する積乱雲は数キロメートルオーダーの構造を持っている。これらのシミュレーションにはこうした異るスケールの構造を同時にシミュレーションできるモデルが必要である。ここで開発するべき雲解像モデルは、広域の領域を非常に細かい解像度で覆うものでなければならない。そこで高速の並列計算機で実行できる雲モデルの開発を行った。 ここで開発したモデルは、基本方程式系は非静力学圧縮系で、座標系は地形に沿う3次元直交座標である。変数は、流体力学過程について、流れの3成分、温位、気圧、雲物理過程について、水蒸気、雲水、雨水を用いている。雲物理過程は現在のところバルクの暖かい雨のみを含むが、将来的にはバルクの冷たい雨、さらに詳細な雲物理過程の導入を計画している。この新モデルは並列計算機用にデザインされたもので、大規模な領域、高解像度のシミュレーションができる。このモデルのテストとして、ドライの大気では山岳波、KH不安定等をテストした。また湿潤大気では、1999年9月24日に愛知県豊橋市で、台風18号に伴って発生した竜巻のシミュレーションを行った。広領域でかつ100mの水平解像度のシミュレーションで竜巻の親雲となる準定常的なスーパーセルが形成され、その中心部付近で竜巻に相当する規模と強さの渦が発生した。これより雲解像モデルの並列計算により竜巻をその親雲と同時にシミュレーションでき、そのメカニズムを解析できる可能性が示された。この他に既存のモデルを用いて、梅雨時に小規模な山岳の風下に形成される降雨帯のシミュレーションを行い、その形成メカニズムについて調べた。
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