研究概要 |
これまで理論的に見いだされていた岩屑流の底部境界波が実在するかどうかを実証的に探るのが今年度の研究の目的である.代表者(小林)の説は,底部境界層に沿って1種のリ-キングモードが伝播しうるというものである.数値計算結果によると,その伝播速度は境界層の厚さに応じて20-70m/s程度であるから,やや高速の地すべりのすべり速度はこれに接近するか,越える可能性がある.地すべり速度が底部波の速度に接近すると,波が変形エネルギーを運び去るのがまにあわなくなって,sonic boomが起こり,すべり土塊に流動化が生ずると考えられる.この考えは,大規模な地すべりのnetの摩擦抵抗が低くなる原因は,すべり土塊の機械的流動化によるとするDavies(1982)の説とも調和的である.この結果はいくつかの国内外の会議で報告した. 分担者(宝田)は訪米の機会を利用し,Mt.St.Helensの踏査を行い,岩屑流堆積物を多く観察した.その結果,多くの流山は給源での層序を保持したままであり,また弱いジグソ-クラックの入った岩塊が下流部の堆積物中にも見られ,岩屑流が基底部のみで剪断されていたと考えられる.基底部の露頭は1ケ所だけ発見された.この厚さ70-50cmの基底部には長さ1mの木が入っており,逆級化構造(大きい岩片ほど上部にある)が見られた.これらの観察札事実はいずれも岩屑流がplug flowであることを示唆し,底部境界層説と調和的であった.これらの結果は,米国のいくつかの研究機関で発表した.また岩瀬川および開田岩屑流の堆積物調査結果を論文にまとめた(投稿中のためリストには含めず).
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