研究概要 |
1. 1980年5月18日の米国ワシントン州,St.Helens火山の岩なだれについてのHarry Ghckenの論文に日本語要旨をつけて出版普及した(宝田・鹿野).この論文は,1991年6月3日の雲仙の火砕流で亡くなったH.Glickenによる完成間近だった原稿の短縮版である.短縮版ではあるが,原論文の重要な内容はすべて含み,関係研究者に有益であろう. 2. 日本火山学会98年秋季大会において「大規模岩屑流の運動メカニズムの再考」と題して岩屑流メカニズムについてレビュー報告を行った(小林). Campbell et al.(1995)は“流れ"を主張しており, “plug flow説"に挑戦している.彼らの説を検討した結果,彼らのメカニズムが該当するのは動き始めの段階であり,いずれのメカニズムもすべりの加速,粒状体的な流れ,減速から停止などのいずれかの段階に適用されるべきものと考えられる.Kobayashi(1994)の底部境界波説も,地すベりから流れに移る段階に適用すべきものと考えられる. 3. 田代岳火山の岩瀬川および開田岩屑なだれの輸送,堆積の特徴について論文をまとめた(印刷中,宝田他) 岩瀬川岩屑流堆積物や開田岩屑流堆積物,St.Helensの岩屑流堆積物と見るかぎり,基底部や周辺部の30cm・1.5mの範囲に逆級化構造が見られることが多い.このことは,おそらくplug flowの基底部や周辺部では,強い剪断応力がかかっているために,(1)岩片同士の衝突による分散圧力(Bagnold,1954)が働いた,(3)流体力学的なboundary effectによって大きい岩片が上部に浮いた,(3)もろい岩屑流岩塊や岩片はすべてほぐれてしまった,などの原因によって基底部に逆級化構造ができたのだと考えられる. 4. 大規模岩屑流の運動メカニズムのレビューを行い,出版した(小林)
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