研究概要 |
本研究の最終目的は、大規模土砂崩壊に伴う津波災害に関する予測法を確立することであるが、ここでは、約200前に発生し、死者15,000人を越える災害となった長崎県島原半島の眉山崩壊に伴う津波災害の再現計算を行うことを目的としている。特に再現計算では、従来ほとんど検討がなされていない眉山の崩壊過程の数値解析を実施するとともに、その崩壊土砂が有明海に突入する数値解析結果と津波の数値解析を複合させた形で実施することに特徴がある。 本年度は、昨年度に引き続き過去の災害資料の収集を行い、災害の実態をより正確に把握するとともに、眉山災害の再現数値シミュレーションを実施した。まず、眉山崩壊過程の数値解析では、津波発生に影響を与える海域へ突入する際の流動速度や流送厚に影響を及ぼすパラメーターについて検討するとともに、有明海での眉山崩壊上の堆積状況から、眉山崩壊土の流送過程を再現した。さらに、この眉山崩壊土の流送過程を境界条件として、有明海での津波の発生・伝播の数値シミュレーションを行い、資料解析によって検討した眉山災害の実態と比較検討した。数値シミュレーション結果は、従来の実態調査結果とほぼ一致し、数値計算法の妥当性が明らかにされた。 また、津波の遡上特性についてもモデル地形を想定した数値実験を行い、遡上特性に影響のあるパラメータについて検討した。その結果、津波の遡上高は、沖波の波形勾配、相対水深、粗度係数、陸勾配および地形特性に大きく影響されることが判明し、最大遡上高は沖波波高の6倍程度の高さまで達する可能があることが判明した。
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