本年度は、必須の実験装置の一つとして電磁石を購入し、一方本研究室で別途試作・調整を続けてきた光励起サブミリ波レーザー装置を完成して実験の準備を整えたうえ、固体プラズマ中のサブミリ波伝搬の基礎的な検討から実験を開始した。まず、固体プラズマ材料のp-InSbのサブミリ波伝搬路としての可能性を検討するために、p-InSb薄板を液体窒素温度に冷却し、それに対して垂直に入射する447ミクロンのサブミリ波の透過電力の磁界に対する変化を測定した。その結果、冷却時においては磁界を印加しない状態でも十分低損失でサブミリ波が透過する結果がえられた。いっぽう、上記の実験の構造に対応する近似的な理論解析によって試料の厚み、キャリヤ-の密度などに対する透過特性の理論値を求め、理論的にも同様の結果を得た。これらの結果は、固体プラズマ材料であるp-InSbがサブミリ波帯の誘電体イメージ線路の構成要素となりうることを示すものである。さらに将来のイメージ線路の構造に対する解析を行い、光によるプラズマ注入を仮定して種々のプラズマ密度に対する伝搬特性を求めた。 研究期間が限られていたので、本報告書作成の時点ではまだ実際にプラズマを注入した状態の伝搬特性の測定を行うには至っていないが、次年度以降は、光注入および電流注入によるプラズマの発生と、その分布の測定、ならびにプラズマが存在する状態でのサブミリ波の伝搬特性の測定に進む予定である。なお、本年度の研究の成果は次回の学会で発表する予定である。
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