研究概要 |
チェレンコフ相互作用と遅波および速波サイクロトロン共鳴相互作用が縮重した,新しい機構によるマイクロ波源を提案する。このマイクロ波源においては,大電流電子ビームを,磁場零の条件で発生させ,マイクロ波発生に適した形状で伝搬させることが重要となる。以下に,当該年度の研究成果をまとめる。 1. チェレンコフ相互作用とサイクロトロン相互作用が縮重する磁場零でのビーム不安定性の機構を線形解析により明らかにした。磁場零においては,軸対称TMとTEモードは導波管系の固有モードであり,縮重相互作用はTMモードで起こり,軸対称TEモードでは起きないことを明らかにした。 2. 20GHz帯コルゲート遅波導波管により磁場零でのマイクロ波発生実験を行った。ガイド磁場を用いないで,遅波導波管中に電子ビームを入射,伝搬させるため集束電極,誘電体ガイド,ヘリュウムガスを用いた実験を行い,マイクロ波発生にはヘリュウムガスを用いた電子ビーム伝搬が適していることを示した。 3. ヘリュウムガス圧100〜150mTorr,ビーム電圧30〜50kV,電流値100〜200Aでマイクロ波発振が確認された。発振電力は,現段階では1kW以下と小さい。 4. 電圧が約35kVにおいては,発振モードはTMモードで周波数は20GHzであった。電圧が約40kVと高くなると,発振モードはTEモードで周波数は30GHz程度に上昇した。これらのモードの放射パターンは単一モード発振では説明できず,複数のモードが同時に発生するマルチモード発振の可能性がある。TMモードは軸対称モードと思われるがTEモードは非軸対称であった。 今後,非軸対称モードやマルチモードでのマイクロ波発生機構を調べていく必要がある。
|