平成9年度は以下の実験と測定を行なった。 (1) ソリトンとイオン音波に重点をおく調査は、2GHzオッシロスコープを用いてソリトンとイオン波の双方が現れる測定を行い、主として両者の時間関係を調べた。 (2) キャビトンの調査は、二つの方法で行った。(2a)まず、第一に、電子ビーム電流の窪みとして観測する時は、直流分の電流+パルス・ビームを用いた。(2b)次に、コレクタ中のイオン波を取り扱う場合はCW-ビームを使用した。 平成10年度は、理論モデルの作成と、9年度で得られたデータの解析から次の結果を得た。 (1) 高域混成波ソリトンがイオン波とカップリングを起こす事。即ち、(a)電子ビーム集電極電流上でイオン波は非線形性により三角波となる。急激なイオン波先端の負電位と同期してソリトンが発生する。(b)高密度領域では、イオン波は密度の窪み(キャビトン)となって現れる。 (2) ソリトンは間欠的なバーストであり、持続時間は、低プラズマ密度で、300ns〜600ns、高いプラズマ密度で800ns〜1μsの時間幅を持つ。この間のキャリヤの位相の連続を確認した。 (3) 低プラズマ密度では、ソリトンの包絡線はHypabolic secantの形に近いが、高プラズマ密度では波高値は低く、時間幅は増加する。これは相互作用(非線形ランダウ減衰)の影響とみられる。このとき、変調不安定性もみられる。 理論的成果としては、Vlasov-Poisson系から出発し、繰り込み理論、強い乱流理論を経て、ビームによるソリトン放出理論作成に成功した。電子ビームがイオン波に衝突しソリトンを放出する。ソリトンとイオン波のカップリングの原因も、これによるとみられる。また非線形Landau-減衰項を非線形Schrodinger方程式に入れたモデルを解析し、高プラズマ密度に於けるソリトンの影響を調べた結果、実験にほぼ一致した。
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