研究概要 |
自己TOF型中性子検出器を用いた散乱中性子測定を目的として、エネルギー分解能と検出効率の兼ね合いから実験と改良を行なってきた。昨年度までにスタート検出器の厚さと検出器の光信号の取り出し法、ラジエータの厚さなどの改良を重ね、最良の検出器体系を決定および整備した。今年度は、その検出器体系を用いて散乱中性子の測定を開始した。 日本原子力研究所高崎研究所TIARAサイクロトロン施設の68MeV陽子を薄い^7LIターゲットに当てることにより得られる65MeV準単色中性子源を用いて、65MeV中性子のグラファイトターゲットでの散乱中性子を自己TOF検出器により測定した。まず、中性子ビームラインに自己TOF検出器を設置し、線源中性子を測定した。中性子エネルギースペクトルは下限30MeVまで得られ、また、65MeVピーク中性子収量は、他の手法による結果と5%以内で一致を得た。次に、中性子ビームラインに10×10×10cm^3のグラファイトターゲットを設置し、ビームラインに対し30,45度の2点で65MeV中性子のグラファイトでの散乱中性子を測定した。その結果、65MeV最大エネルギーから下限20MeVまでの散乱中性子エネルギースペクトルを得ることができ、炭素の中性子散乱二重微分断面積を得た。 また、線源中性子測定と同様に中性子ビームラインに検出器を置き、ビームラインに対し0度の生成荷電粒子を測定した。ラジエータとして0.5mm厚のグラファイトを用い、C(n,px),C(n,dx)反応断面積を得た。中性子による0度方向の荷電粒子生成断面積の測定は、検出器自体が線源中性子ビームにさらされるため、極めて困難で現在まで実験データは存在せず、本研究により非常に貴重な実験データが与えられた。
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