研究概要 |
最近我が国では、20〜210MeVの広範囲において、陽子を薄い^7Liに当てることにより得られる準単色中性子場が東北大学サイクロトロンRIセンター、日本原子力研究所高崎研究所TIARAおよび理化学研究所の各サイクロトロン施設で整備された。本研究ではこれらの中性子場を用いて中性子散乱断面積の測定を行うことを目的とした自己TOF型検出器を開発した。自己TOF型検出器は、中性子によりラジエータで生成した反跳陽子のエネルギーを、2つの離れたシンチレータを用いて飛行時間法で測定することにより入射中性子エネルギースペクトルを求めるという原理であり、遮蔽物質を透過または散乱した高エネルギー中性子を測定するのに適した検出器である。本検出器は、入射粒子中の荷電粒子の検出するVETOシンチレータ、ポリエチレンラジエータそして粒子の飛行時間を決定するSTARTシンチレータおよびSTOPシンチレータで構成される。 本研究では、各サイクロトロン施設における準単色中性子を用いて検出器応答測定を行い、中性子散乱断面積の測定に適した自己TOF検出器の体型や測定条件を求め、その応答特性を明らかにした。また、グラファイト散乱体における散乱中性子の測定を行い、炭素の二重微分断面積データの測定が可能であることを確認した。さらに、この検出器により、中性子による荷電粒子生成断面積の測定も可能である事が本研究で明らかとなり、C,Al,Cuの(n,px),(n,dx)反応断面積の測定データを得た。今後、この検出器を用いて様々な核種の中性子性子散乱断面積や荷電粒子生成断面積の測定が期待される。
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