研究概要 |
本研究は、放射線計測用素材として種々の優れた特性を有する光ファイバーに着目し、これを特に医学分野の放射線計測に応用して、最近の診断、並びに治療用X線、電子線による吸収線量を精密に測定、評価するための技術的方法を開発することを目的としている。本年度は、次の2点について研究開発を実施した。 1,最近の螺旋軌道X線CTによる体軸方向に沿った広範囲の被曝線量を高精度で測定するため、人体ファントム中の体軸方向に1m程度の範囲にわたって一様な検出感度を有する、シンチレーションファイバー型線積分線量測定器(検出器および付属エレクトロニクス)を試作した。すなわち、長さ2mのシンチレーションファイバーの両端に光電子増倍管を取り付け、両端から信号が得られるようにした検出器、並びに、シンチレーションファイバーの発光位置によらず一定の検出感度を得るため、ファイバーの両端から得られる電流信号を電圧信号に変換した後、それぞれの信号強度をアナログ乗算器を通して掛け合わせ、その平方根を求める信号処理回路を設計、製作した。検出器を人体ファントム中に置き、螺旋軌道X線CTからのX線ビームを検出器に照射してこの方法の有効性を確かめた。 2,最近のラジオサージェリで使われる電子線加速器からの高エネルギーX線の人体(ファントム)中局所領域の吸収線量測定用として、光ファイバーの先端に微小シンチレーションファイバーチップを付加した、ポイント線量測定器を試作した。安定で再現性の良い線量測定を行うため、光電変換部にフォトダイオードを使用し、パルス信号処理方式を考案して、そのための処理回路を設計、製作した。ラジオサージェリーと同様のX線照射条件で人体ファントム中の線量分布測定を実施し、この方法の有効性を確かめた。
|