本年度は、X線CT検査による被験者の被曝線量を測定するための、微小シンチレーター光ファイバー線量計(以下、シンチレーション・ポイント線量計)の開発とその応用研究を実施した。 昨年度試作したシンチレーション・ポイント線量計は、材質が人体組織等価で、且つ、感度がX線入射方向について均一であるなど優れた特性を有しているものの、診断領域(数10keV〜150keV)のX線に対して感度がX線エネルギーとともに多少変化(増加)する欠点があることが分かった。そこで、感度のX線エネルギー依存性がCT被曝線量測定精度に及ぼす影響を評価するため、シンチレーション・ポイント線量計と正反対のエネルギー応答特性を有するシリコンフォトダイオード線量計を開発し、ファントム中でこれら2種類の線量計によりCT被曝線量を測定して、得られた値を比較した。その結果、シンチレーション・ポイント線量計感度のX線エネルギー依存性に基づく線量測定誤差は、最大でも5%以下で十分小さいことが明らかになった。 シンチレーションポイント線量計およびシリコンフォトダイオード線量計により、これまで被曝線量測定データの無かった螺旋軌道型CTスキャンについて、本研究で作製した人体等価胸部ファントムを用い、その中心部および表面の吸収線量を種々の検査モードで測定した。被曝線量に及ぼすX線管電流、スライス厚、ピッチなどの検査条件、さらに、CTスキャンの機種の違いによる影響を調べ、胸部CT検査における臓器、組織吸収線量の基礎的データを得た。
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