研究概要 |
原子炉中性子で照射した4H及び6H型炭化珪素単結晶における光学及び電気的特性は、光学的分光分析法及び電気的測定法で分析された。試料は、京大の研究炉に設置された低温照射装置(KUR-LTL)において種々の温度で又、東大の高速中性子炉(YAYOI)において室温で照射された。その照射試料中に、780nmに中心を持つ幅の広い光吸収帯が観測される。その吸収帯の起源は、常磁性の珪素空孔より成る欠陥と類似の熱焼鈍特性を持つことからSi空孔型の欠陥中心(V_<si>-type center)によるものとされた。 KUR-LTLで種々の温度で照射されたSiC結晶中に生成されたV_<si>-type centerの生成効率は、約200Kで最大になる。このV_<si>-type center生成の照射温度依存特性は、20Kから400Kの間で一様に減少する傾向にある酸化物や金属等と明らかに異なっている。 一方、中性子照射されたSiC試料の電気抵抗値は、中性子線量の増加と共に高くなることが分かった。その抵抗増加は、キャリア密度の減少によって説明された。高温でのアニール挙動から、電気抵抗とキャリア易動度が350Kと500Kの二つのアニール段階持つこと、又、両者は、800Kのアニールで40%回復すること、しかし、その温度でキャリア密度は変化しない等のことが分かった。 また、SiCの中性子転換注入(NTD)効果が観測され、^<29>Si(n,γ)^<30>Si反応により生成された^<30>Pの一部が電子ドナーとして有効に働くことが確認された。
|