研究概要 |
前年度の研究成果を踏まえ,効果のみられたZrおよびSi系化合物に焦点を絞り,高濃度添加により明確かつ詳細な腐食抑制効果について検討した。具体的には,前年度と同様なワン・スルー式の高温・高圧装置(試験水流量10ml/min,試験温度288℃および試験圧力90kgf/cm^2)を,試験片として実装置で使用されているオーステナイト系ステンレス鋼(SUS 304)および炭素鋼(STPT 410)を,および,添加物としてZr系化合物[Zr(NO_3)_2]およびSi系化合物[Na_2SiO_3]を用いて,添加物濃度100PPb〜1ppm(高濃度添加条件),溶存酸素濃度200ppbおよび試験時間500hで暴露実験(添加物連続注入試験)を行ったところ,無添加剤系に比べて鋼材の全腐食量(または腐食速度)がSi系化合物添加の場合では前年度と同様にステンレス鋼で低下したが,Zr系化合物添加の場合では炭素鋼と共にステンレス鋼でも低下し,特に,300ppb以上の添加条件では顕著となった。これより,高濃度添加によりZrおよびSi系化合物の腐食抑制がより明確となった。さらに,この酸化皮膜の粒子粒径や皮膜形態を走査電子顕微鏡観察(SEM),深さ方向の各元素の濃度分布を二次イオン質量分析(SIMS),皮膜抵抗を電気化学的インピーダンス測定(EIS)などより総合的に評価したところ,Zr系化合物添加の場合ではZr酸化物により皮膜保護性が増大して腐食抑制しているという前年度の成果を裏付ける結果が得られた。また,Si系化合物添加の場合ではSiO_3^<2->吸着によるCrO_4^<2->の外部拡散の抑制効果のためと考えられる。
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