研究概要 |
原子力発電プラントである沸騰水型原子炉(BWR)の一次冷却水系と同様な環境を有する装置として,水質調整槽,高圧プランジャーポンプ,予熱器,オートクレーブ(容量0.38l,チタン製),冷却器,背圧弁などより構成されるワン・スルー式の高温・高圧装置(試験水流量10ml/min,試験温度288℃および試験圧力90kgf/cm^2)を作製した。試験片として実装置で使用されているオーステナイト系ステンレス鋼(SUS 304),炭素鋼(STPT 410)および鋭敏化処理したSUS 304を,および,添加物としてZn系化合物[Zn(NO_3)_2,ZnSO_4およびZnO],Al系化合物[Al(NO_3)_2およびAl_2(SO_4)_3],Zr系化合物[ZrO(NO_3)_2]およびSi系化合物[Na_2SiO_3](添加濃度100ppb〜1ppmおよび1μM)を用いて,溶存酸素濃度〈5〜8000ppb,プレフィルミング処理の有無および試験時間200〜600hで暴露試験を行った。特に,無添加系に比べて鋼材の全腐食量(または腐食速度)が,Zr系化合物添加(ステンレス鋼と炭素鋼の場合)およびSi系化合物添加(ステンレス鋼の場合)により低下する傾向が見られた。暴露試験後の鋼材表面には酸化物に基づく皮膜が形成された。さらに,グロー放電発光分析法(GDS),X線光電子分光法(XPS),二次イオン質量分析(SIMS)などによる深さ方向の分析より鉄に富んだ酸化物の外層とクロムに富んだ酸化物の内層の二層構造の皮膜が確認された。各種物理化学的測定の総合的な評価より,特に腐食抑制効果の見られたZr系化合物およびSi系化合物の添加の場合,Zr系化合物ではZr酸化物による皮膜保護性の増大およびSi系化合物ではSiO_3^<2->吸着によるCrO_4^<2->の外部拡散の抑制により,効果的に腐食抑制されたと考えられる。
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