研究概要 |
地球環境問題等を解決するために、クリーンで無尽蔵な太陽エネルギーを利用した太陽光発電が注目されている。この太陽光発電を実用化するためには、低価格で高効率な太陽電池を開発することが重要である。最近、カルコパイライト型Cu(In,Ga)Se_2薄膜太陽電池で17%を越える変換効率が得られたことから、有力な候補のひとつになっている。しかしながら、さらなる高効率化のためには太陽電池で理論的に最適なバンドギャップに近づけた活性層を用いる必要があり、我々はバンドギャップが約1.4eVで大粒径のCu(In,Ga)Se_2薄膜を作製できることを明らかにした。ところが、この材料を用いて太陽電池を作製する場合、従来使用されていた窓層(CdS)では格子不整合率が悪化する問題が生じる。本研究では、従来のCdSに比べて、Cu(In,Ga)Se_2の0≦Ga≦1のすべての範囲で完全に格子整合可能な(Cd,Zn)Sに着目し、溶液成長法により当該新型窓層を作製することを試みる。特に、溶液成長法における原料溶液の混合比や錯化材として用いるアンモニア供給量が新型窓層の特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。格子整合型窓材料を作製するために、ヨウ素系化合物からの溶液成長法により(Cd,Zn)S薄膜の作製を行った。各原料溶液を80℃で予備加熱した後、混合と同時に錯化材のアンモニアを添加する新しい成膜プロセスを考案し、錯化材添加量依存性を検討した。その結果、錯化材の添加量により、薄膜中へのZnの取り込まれ量やバンドギャップを制御可能であることが判明した。さらに、Znの取り込みに有効な錯化材量を一定にして、Cd源とZn源の混合比を変化させて成膜した結果、(Cd,Zn)S薄膜中のZn混晶比やバンドギャップを連続的に制御させることができた。そのため、従来のCdSと比較して、Zn混晶にすることによりバンドギャップの増加による窓効果の向上が期待できる。
|