KURおよびKUCAなどから放出されるトリチウムの格納容器内並びに排気中における濃度変化は複雑であり、昨年度実施したKURに関しては、室および排気中における空気凝縮水の液体シンチレーション法による測定に加えて、放出源近傍では電離箱を用いたモニタリングによりその全容を明らかにした。さらにKUCAに関しては、加速器のビーム調整が不良であったことから、今年度もトリチウムターゲットを用いた実験は実施されなかったが、炉室および使用済みターゲットが貯蔵されている化学実験室や隣接する室のモニタリングを実施し、空気中の濃度レベルを把握した。得られた結果は以下のとおりである。 1. 約40kgの重水素を充填する冷中性子設備(CNS)を被う黒鉛層からの排気凝縮水中比放射能は最大で2×10@@S15@@E1Bq/ccと高いが、排気流量は1.8L/minと少なく、また炉室空気とは隔離された@@S141@@E1Ar減衰タンク系の濃度である。このような炉近傍から炉室内へ漏洩するトリチウムの濃度は、炉室の空気と換気により希釈されるため、換気停止中(通常は金曜日18時から月曜日9時まで)でも濃度は低い。CNSや重水設備を含めたトリチウム放出源からの漏洩により上昇する空気中凝縮水濃度の範囲は、1998年6月1日から1999年3月1日までの期間では20-50 Bq/ccであった。炉が換気されると室内濃度は10時間以内で1/10以下となり、同じ8ケ月間では0.4-2 Bq/ccの範囲であった。しかも他の排気(ホットラボ実験室などの換気)と混合されるため、スタックでは更に低くなり、排気中凝縮水の98年度の濃度は高々0.3-1 Bq/ccであった。 2. 前述したCNS@@S141@@E1Ar減衰タンク系の排気凝縮水を電気式除湿器により回収し、その下流の排気を炉運転による@@S141@@E1Ar濃度が影響しないオーバーホールの時期(8月)に連続測定した結果、最大2.5×10@@S14@@E1 Bq/Lを示した後、1ケ月後には約1/10に濃度が低下した。しかしながら9月からの炉運転とともに、週の運転終了後@@S141@@E1Arの10半減期以上経過した排気濃度は、炉の運転期間と伴に上昇傾向を示しており、CNS重水素の放射化により生成されるトリチウムが、主なKUR排気中における発生源と考えられる。 3. KUCAは建家の換気を停止した状態ても化学実験室で2.8 Bq/cc、炉室で最大1.5 Bq/ccとKURに比べれば無視できる程度の空気凝縮水濃度レベルであった。
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