研究概要 |
原子炉実験所における過去2年間の調査により,トリチウムの環境への放出源のうち最も寄与の大きい排気系統は研究炉建家であることが確認された。平成10年度ではその建家スタックからの排気濃度が換気条件により異なるため、連続的に換気され、濃度が定常になる通常、金曜日の数時間、排気中凝縮水を採取して0.4〜1Bq/mlの濃度であることを明かにしたが、今年度は換気の開始から終了までのほぼ80時間を凝縮水の連続サンプリング期間とし、平均的な濃度を測定した。その結果、0.8〜2.9Bq/mlと数倍高い濃度が検知された。これは換気停止時において研究炉建家内で増加した濃度が長時間サンプリングの結果として反映されるためであり、昨年度よりも環境への放出率の精度がより高く評価された。 研究炉建家内では炉近傍の施設に設置されている放射性アルゴンの減衰タンク排気系統に高濃度トリチウム凝縮水の検知されたことは平成9年度に報告したが、平成11年度は冷中性子(CNS)設備の排気中におけるトリチウムを電気式クーラー、シリカゲル(Si)、バラジウムアルミナ(Pd-Al)、モレキュラーシーブ(Mos-3A)などを用いて除去率を算定した。その結果、元素状及び酸化態トリチウムが混在していると考えられるCNS排気は電気式クーラーにより約25%が酸化態トリチウムとして除去されること、この除去後の排気はSiカラム(20g)により約45%、Pd-Al(20g)では95%除去されるが、Mos-3A(30g)では全く除去されないことが判明した。これにより、元素状のトリチウムはPd-Alによる除去効果が最大ではあるが、通気抵抗が大きく、処理量の観点からは単独で用いることは困難と考えられる。
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