トリチウムの漏洩が想定される重水設備やその配管等を改修した後でも、金曜日に炉室の換気が停止すれば、炉室空気中濃度は、次週の換気再開直前には数十倍に増加する。この原因を検討するために、平成12年度を含めて過去の炉近傍設備からの排気濃度結果を炉の出力と比較した。その結果、重水、CNS設備とも炉の長期の稼動・停止と共に増減する傾向が認められた。その結果、トリチウム源は漏洩によるものではなく、空気中窒素が放射化されて生成されるものと判断され、炉の安全上問題のないことが確認された。 他方、京都大学原子炉実験所は小規模といえども実際に原子炉施設として核分裂炉を連続に稼動させ、また放射線取扱施設も有している。そこで建家内外の発生源近傍におけるトリチウムのモニタリングを本研究の目的の1つとして1997年度以来、実施してきた。その結果、環境中試料(野外空気水分や排水経路の水)の濃度は、バックグラウンドと考えられる数km離れた河川水に比べれば数倍高い数Bq/Lであるが、この濃度が、人体の水分と平衡であると安全側に仮定しても、トリチウムによる年間の被ばく線量は10^<-3>mSv以下であり、自然放射線からは年間平均2.4mSvを受けることを考えれば、周辺の公衆が安全であると判断された。
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