降雪粒子による酸性ガスの取込みを観測によって明らかにするには、降雪粒子の形状・雲粒捕捉の程度を自動・連続的にモニターすることが不可欠であり、降雪粒子自動連続観測装置を試作・実用化した。上向きにセットされた2台のビデオカメラで透明なアクリル円盤の上に採取された降雪粒子をモニターした。カメラの視野はそれぞれ55×42mm^2、9.2×7.0mm^2である。雪片と霰の識別すること及び雪結晶形や雲粒捕捉の程度を知ることができる。アクリル円盤上の降雪粒子は一定間隔毎にブロアで吹き飛ばされ、次のサンプリングに備えられた。 1998年1月中旬から3月上旬にかけて、札幌市の郊外で降雪粒子を約1時間間隔で採取・冷凍保存し、上記装置及び顕微鏡による降雪粒子の観測及び塩化水素ガス・硝酸ガスなど大気汚染物質のモニタリング、電子天秤法による降水強度の連続モニタリングなどを行った。試料の化学分析・データ解析を行い、1997年1月に人為的影響のほとんどない北海道母子里での観測結果も併せて、酸性ガスの取込みという視点から考察した。気相成長する雪結晶の場合だけでなく、雲粒捕捉成長が卓越している場合にも硝酸ガスや塩化水素ガスが取り込まれていることがわかった。観測点での大気中の硝酸ガス及び塩化水素ガス濃度は低かった。また、人為的汚染源の影響が少ない地点でも気相成長か雲粒捕捉成長かに関わらず、硝酸ガスや塩化水素ガスが降雪粒子によって掃去されていることがわかった。したがって、降雪粒子に取り込まれた硝酸ガス及び塩化水素ガスは観測点付近のローカルな都市大気汚染の影響を受けたものでなく、雲と密接に関係して運ばれてきたものと推論された。
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