研究概要 |
貧栄養湖である阿寒パンケ湖に生育する微生物群集のうち,有機物生産を担う植物プランクトンは夏期成層期において2μm以下の小型のものが優占種となり,20μm以上の大型のものは循環期に優占種となった。基礎生産からみると,阿寒パンケ湖は微細な植物プランクトン(ピコプランクトン)が支えているものと考えられるが,少ないながらも春期ブルーム時には,メロシラ属のような大型のケイ藻が,また,成層期には混合栄養型の植物プランクトンが支えている可能性も考えられた。成層期で太陽光が透過する限界である補償深度以深に生育する植物プランクトンの光合成活性を測定すると,表層の10-20%程度の活性が得られ,必ずしも死細胞ばかりではないと考えられた。また,植物プランクトンが生産し,体外に排出しているであろう有機物を利用し,再び生体を構成する役割をする細菌群数は,他の貧栄養湖(洞爺湖,支笏湖)とは異なって比較的高く(約10倍),中栄養湖と同程度の現存量を示していた。 比較対象として中栄養湖の対象となった小野川湖では,基礎生産量の最大値は1m層で79.4mgC/m3/dayであった。一方,活性度を表す単位クロロフィル-aあたりの生産量は18.4mgC/mgchl-a/dayであったが,この生産量は,5月と9月に低下することが示された。低下する理由として,植物プランクトン種の入れ替わり,水温の影響,栄養塩類の欠乏などが考えられた。この中で栄養塩類は,その取り組みに関して他の微生物群集との競合が考えられ,微小生態系についての研究を行う必要がある。
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