研究概要 |
阿寒パンケ湖(貧栄養湖),猪苗代湖(弱酸性型貧栄養湖)に引き続き,今年度は比較のため,富栄養湖である茨戸湖と,猪苗代湖と同様な弱酸性型貧栄養湖である毘沙門沼について過去に得られた結果を解析し比較検討した。 茨戸湖では1980年代までは富栄養化のためMicrocystis aeruginosaをはじめとするラン藻類の濃厚な水の華が発生していたが,1990年代には,そのような水の華の発生が見られなくなっていた。この現象の理由として,水温と残存栄養塩類濃度の関係が考えられていた。物理的な因子である水温に対する植物プランクトン群集の応答について茨戸湖での調査と培養実験を実施した結果,ケイ藻群集とラン藻群集の入れ替わりについては水温の上昇の遅れと残存栄養塩類濃度,特に溶存態無機リン濃度によって引き起こされることが明らかとなり,生物多様性の変化について検討可能となった。 また,阿寒パンケ湖のほかに研究対象とした酸性型貧栄養湖である猪苗代湖は,クロロフィル-aであらわされた植物プランクトン量は少ないものの,表層より中層(今回は10m)に多い傾向が認められた。またサイズとしては阿寒パンケ湖と同様に20-2μm程度の小型サイズのものが多いことが明らかとなった。同様な傾向は弱酸性湖である毘沙門沼でも見られた。また,これらの湖沼では細菌数が極端に少なく湖内有機物の代謝系は細菌以外によることが示唆された。
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