植物個体のライフサイクルにおえける養分元素のリサイクルシステムを知るため、まずアサガオを用いて、初根から結実までの各組織中の元素の動態を放射化分析により求めた。アサガオを培養土を用いポットで育成させた。同じ生育状態の植物試料を5〜10本採取し、12の生育時期、約100個体を用いて元素分析を行った。採取した各植物試料は、根、各茎、各葉、花、実などの各々の組織に分け、非破壊状態で、Na、Mg、Al、Cl、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Brならびに希土類元素数種を定量することができた。ライフサイクル中、これらの元素は根-地上部間の関門以外にも、葉と葉柄、花柄と花などの間に一定の濃度関門を形成して分布していることが示された。環境問題で着目されている、AlとVは殆どが根のみに存在し、KおよびClは、葉-葉柄において濃度差が大きく、その傾向は全ライフサイクルにおいて一定であった。Mnは、蒸散流に従った濃度分布を示し、古い葉ほど濃度が高かった。Ca濃度は幼植物期に蓄積され、花芽形成に伴い上部へ移動した。また、実では、種柄、種皮に重金属は蓄積され、種子内にはほとんど蓄積されないことが判った(J.Radioanal.and Nuclear Chem.3報で印刷中)。吸収された元素が全てまた次世代の植物により利用されると仮定すると、最もリサイクルにおいて不足する元素はKであり、約3世代目にはK欠乏となることが示された。これらの結果を踏まえ、現在ダイズでも同様な実験を試みている最中である。
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