1.2元蒸着によるニトロン-塩化バリウム同時複合薄膜法を新たに開発し、個別の硫酸・硝酸塩粒子同定のための最適条件を求めた。すなわち、蒸着条件(印加電圧、時間)、粒子捕集後の反応雰囲気場としての有機溶媒の選択を、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウムおよび両者の混合粒子を実験室的に発生させて検討した。その結果、エタノール、イソプロパノール混合溶液の飽和蒸気下においた場合が硫酸及び硝酸塩粒子とも特異的に検出できることが新たに認められた。さらに、元の粒子径と反応後の粒子サイズとの関係を明らかにし、実大気中のエアロゾル粒子に本方法を適用することにより、夏期においては硫酸・硝酸塩の内部混合粒子がわずかに存在するものの、冬季には全く存在しないことがわかった。 2.桜島および宇治において捕集した大気エアロゾル粒子を用いて、放射光によるXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)測定を試料電流および蛍光X線について同時に行った。測定は硫黄および珪素のK呼吸端付近で行い、S、Siの配位数によるX線吸収スペクトルの差異から同定を試みた。Sについてはほとんどの試料について酸化数6の硫酸塩粒子であったが、桜島の粗大粒子について2価のものが検出された。さらに、桜島の試料でSiについては、二酸化珪素のような配位数4のものに相当する成分と、SiO4の正四面体構造においてSiの一部が電気陰性度の低いMg等に置換されたと考えられる珪酸塩が試料電流の測定から認められた。
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